YUMEZAIKUYUMEZAIKU

染匠 小室容久の染め

私の染めは、明治以前にやっていた
伝統的な染めを基準に
あくまでも自然にあるものから染料を取り出し
その上で染物としての可能性を模索し、
新しい技術・技法を進化させてきました。
そこから染まる純粋な色そのものを
楽しんでいただければ幸いです。

<第1章 プロローグ>

色の力は、草木の力

古より、人は天地の気の流れや自然の恩恵に与って生きてきました。それがいつしか文明至上主義におもねるあまり自然から遠く離れ、その尊さや草木が持っている力を忘れてしまったのではないでしょうか。このままでは人間はどんどん“不”自然、また“非”自然な存在に陥ってしまうかもしれません。
しかし一方で、私たちはそうした“不”自然のなかで生きていかなければいけないという現実を受け止めざるを得ないことも事実です。だから人はときに心を病み、また心に闇を抱えるのでしょう。そこで今一度、自然の力を暮らしの中に取り入れて生きてきた先人達の貴重な知恵や工夫をひも解いて、それをヒントにすることで現代に生きる私たちにまとわりつく“闇”や“病み”を消し去る術が見つかるかもしれません。事実、草木が染めた色の力が、その“闇”や“病み”に大きな影響を及ぼしてきたことは、人の歴史をみても枚挙に暇がないほどです。
私は、草木が染める純粋な色の美しさと、そこに秘められている色の力や物語を多くの方に知っていただき、それを正しく用いることで人生がより良い方向に進んでいくことを願い、その方法もアドバイスしていきたいと思っています。

万葉時代の純粋な色を求めて

万葉の時代、衣服の色は階級を表していて現代風に言えばセレブが着るブランドと同じく人々の憧れでした。大衆がそういった衣服を身に着けるようになった江戸時代には、ローコストな染めが草木染の主流となります。明治になり化学染料が登場するとさまざまな色の衣服が登場し、かつて庶民には高値の花だった「色」の価値が変わっていきました。例えて言うならば、それまでは“金”といえば24金だったものが、14金でも“金”だという価値観になったような捉え方でしょうか。
 私の工房では、万葉人が憧れたような常に24金の価値がある染めを目指しています。なぜかといえば、純粋でクォリティが高ければ高いほど色のパワーも大きいからです。その色のパワーを正しく身に着けることで、さまざまな幸運を引き寄せることができると信じるからです。それが、あなた自身の“闇”や“病み”を解き放ち、一歩前に踏み出すきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。

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