(染めの種類)
一般に草木染は、「水に溶ける色素」か「水に溶けない色素」かによって大まかに3種類の染めに分かれます。
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①染料染め
「水に溶ける色素」を“染料”といい、布に直接または媒染剤の力を借りて染めていきます。一般的な草木染はこれに当ります。
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②顔料染め
「水に溶けない色素」を“顔料”といい墨染め、泥染め、岩染め、また柿渋染めも仲間に入れていいでしょう。水に溶けないため、例えば墨染めは、その顔料である“煤”を接着作用のある“にかわ”に混ぜて塗り、にかわが固まると色素が固着。染というよりも“塗り”“こびりつかせ”という表現の方がわかりやすいかもしれません。
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③建て染め
建て染めは、顔料を一度還元して水溶性に戻し、布を入れて色素を染み込ませ、それを酸化させて再び顔料に戻し染める方法です。藍染がこれに当り、その色素のインディゴを還元すると水に溶ける色素に変化し、それを布に染み込ませて酸化させます。すると色素が繊維にひっかかり、まとわりついて色が抜けなくなる性質を利用したものです。つまり“藍ひっかかり染め”“藍まとわりつき染め”とも言えるでしょう。
(染めの手順)
草木染は、染めの前にいろいろな準備が必要です。また、ご家庭で手際よく染めるための器具や道具を準備するところから始めましょう。
- 綿、麻、レーヨンなど植物由来の繊維は、そのままでは濃く染まらないため下染めが必要となります。
- 布にしっかり色が染まるように「媒染液」をつくります。
- 植物等、染めの原料を煮出たせて染液を取り出します。
- 下処理した布、染液、媒染液、染液を適温に温めるコンロや水洗いするバケツなどを周りに準備してから染めを行います。
- 最後の脱水は洗濯機を利用します。
- しっかりと脱水し、風通しの良い場所に天日干し。
(1)染める布を用意する 〜下染め〜柄絞り
◎用意するもの
基本的に草木染は自然の繊維以外ではあまり染まりません。草木染に適している繊維は「ウール」「絹」「綿」「麻」や「レーヨン(再生繊維)」など。レーヨンは元がパルプなので染まります。ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は染まりませんのでご注意ください。
◎下染め〜植物由来と動物由来の繊維の違い
草木染は、布のなかのタンパク質部分に色が固着しますので、もともとタンパク質の動物性繊維は濃く染まるような処理をする必要がありません。しかし、綿、麻、レーヨンなど植物由来の繊維は、タンパク質部分があまりないのでそのままでは濃く染まらないため下染めが必要です。
★POINT布は、染める前によく洗い、脂や汚れをよく落とします(精錬)。汚れがあると、その部分が濃く染まったり薄くなったりムラになります
<下染めの方法>
ここでは、二つの下染めの方法をご紹介します。
①ひと晩、水に浸けた大豆と水をミキサーにかけ、それを絞って水で薄める→豆汁(ごじる)
②豆汁(ごじる)を染める布に染み込ませてよく絞り、2~3週間程よく乾かす。それを3~4回繰り返す。豆汁がバリバリにこびりつく感じになるまでカラカラに乾かす。
★POINT干し方によってムラが出きたり、シワができないよう干す方向を変えるなどして全体が均一になるようにしっかり乾かす。シワができると、そこだけ濃く染まってしまいますので気をつけましょう。
①お茶、とくに渋茶で布を1回下染めする。
※染め方は、「染める」の1回目手順と同じ。
★POINTお茶で下地をつくったら、媒染はミョウバン(アルミ媒染)をお勧めします。鉄媒染すると真っ黒に染まりますので、媒染剤を選ぶ必要があります。
<絞り柄のつくり方>
◎巻き上げ絞り
①布の一部を指でつまんで持ち上げます。
②布を寄せて、指でつまんだ部分から20センチほどのところをきつく縛り、下から上へ、上から下へらせん状にグルグル巻きにします。ポイントは、きつく縛ること。らせんの数や巻き方によって柄が違いますので、いろいろ工夫してオリジナルをつくってみてください。
◎板締め絞り
①布を蛇腹折りする。
②割り箸で布を上下に挟み、輪ゴムまたは紐でしっかり止める。箸の止め方でいろんな柄が染まります。
- ◎箸が三角になるように止めた場合
- ◎箸が平行になるように止めた場合
◎むらくも絞り
- ①布をぐしゃぐしゃにします。ぐしゃぐしゃにすればするほどおもしろい模様になります。
- ②ひもでしばってまとめます。きつくしばると白いところがたくさん残り模様がはっきり出ます。
- ③完成!
あとはこのまま、
染めたい液にひたすだけ!
◎チェーン絞り
- ①指が2本入るくらいのわっかを作ります。
- ②わっかに指を入れて布を通し、さらに指が2本入るくらいのわっかを作ります。
- ③そのわっかに布を通しさらにわっかを作ります。
- ④これをくりかえします。
- ⑤最後は布を全部通して少しひっぱります。これを染めればチェ-ンしぼりのできあがり!
(2)媒染液をつくる 〜アルミ媒染〜鉄媒染
◎媒染って・・・なぁに?
染物の特徴である「色止め」と「色出し」を同時にするという草木染の用語です。布と染料の仲立ちとなって水に溶ける染料をグッとつまかえてくれるのが媒染剤です。これは金属のサビと思っていただいてけっこうです。よってどういう種類の金属かによって色が決まります。普通、草木染で使われる媒染剤はミョウバンです。これは「アルミ媒染」と言い、アルミ金属のサビで色を止めます。
①アルミ媒染液をつくる
◎用意するもの
アルミワイヤー100g/食酢(お酢)ガラスの瓶/濾し布、容器
◎用意するもの
アルミワイヤー100g/食酢(お酢)
ガラスの瓶/濾し布、容器
①アルミワイヤーを5㎝位の長さに切ってガラス瓶に入れ、レンジで60℃に温めた食酢1リットルを入れる。14日以上置いて上澄み液を濾せばアルミ媒染液の原液となります。
①アルミワイヤーを5㎝位の長さに切ってガラス瓶に入れ、レンジで60℃に温めた食酢1リットルを入れる。14日以上置いて上澄み液を濾せばアルミ媒染液の原液となります。
②上澄みが減れば、さらに食酢を加えて10日以上置く。アルミワイヤーが無くなるまで繰り返し行えます。
③原液100ccを40℃のお湯5リットルで薄め媒染液として使います。
●簡便な方法 生ミョウバン50gを60℃のお湯10リットルに溶かしてアルミ媒染液に!
※注意〜染色後、よく水洗いしないと色焼けを起こすことがあります。
◎身近なところにある媒染の知恵
黒豆を煮るときに鉄釘を入れるのは鉄媒染によって豆が黒くなるからです。また栗きんとんは、ミョウバンのアルミ媒染によってきれいな黄色に染まります。同じくウニのきれいなオレンジ色もミョウバンで発色させていきます。
★ポイントMEMO★媒染液が少なすぎたり薄すぎると、染めが失敗する可能性があります。ミョウバンのアルミ媒染液は、染める布の重量の5~10%を、木酢酸液の鉄媒染液は同じく10~15%を目安にすると良いでしょう。
②鉄媒染液をつくる
◎用意するもの
木酢酸液/錆びたくぎ/ガラス瓶
濾し布、容器
①錆びた鉄釘を2リットル瓶に半分ほど入れ、レンジで60℃に温めた木酢酸液を八分目まで入れて蓋をする。
②14日ほどして上澄み液を濾せば鉄媒染液の原液です。釘が無くなるまで繰り返し行えます
③原液は、染める10~30分前に40℃~60℃のお湯で薄めて媒染液とします.
●簡便な方法 ①薬局などに頼んで、第一硫化鉄を買ってきます。50~100gを水10L~20Lに溶かせば鉄媒染液になります。
②弁柄や鉄分の多い田んぼの泥土を水に溶かして泥上の液をつくり、これで鉄媒染(泥媒染)する方法もあります。大島紬は、この泥媒染で染めています。
(3)染料の抽出
◎用意するもの
・ステンレス鍋またはホーロー鍋
※鉄、アルミ鍋は使用不可
・ステンレスのザル
・プラスチックのバケツ
・コンロまたは電磁調理器
・漉し布・柄杓
・染料となる草木 etc
- 鍋に水を7分目入れ、染料とする草や木を小さく刻んで、できるだけいっぱい入れる。
- 沸騰させて15分~20分以上炊く。
- ザルに布を当て濾す。
これが1番液の染液となります。 - 再度鍋に水を入れ同じ要領で2番液、さらに3番液をつくる。
1~3を混ぜて染料のできあがり。
★POINT-1 葉っぱや実、つぼみ、花などは3番液くらいまで抽出。木の皮、芯材、根っ子などは5~6番液まで抽出。染料は濃くて量が多いほど染めには有利です。
また、1番液と2番液では染めたとき色が違いますので、混ぜずにその差を楽しんでいただいてもけっこうです。
★POINT-2 草木によっては即、染めたほうがいいもの、1日ほどおいて染めたほうがいいものがあります。例えば、「桜」はすぐ染めるとベージュにしか染まらず、1日置くとオレンジ色になります。
また「赤蘇」もすぐ染めるとベージュで時間が経つと赤みが増してきます。
★POINT-3 染まりやすくするため、お酢を入れて炊いたり、灰のアクを入れて炊いたりする場合もあります。いろいろ試すことで染めの楽しさが増してきます。
<抽出手順>
- ①鍋に水を7分目入れ、染料とする草や木を小さく刻んで、できるだけいっぱい入れる。
- ②沸騰させて15分~20分以上炊く。
- ③ザルに布を当て濾す。これが1番液の染液となります。
- ④再度鍋に水を入れ同じ要領で2番液、さらに3番液をつくる。1~3を混ぜて染料のできあがり。
(4)染める
◎用意するもの
・二重鍋(スパゲティ用)
・コンロ
・菜箸(大)
・媒染用バケツ
・水洗い用バケツ
・染液
※媒染用バケツ、水洗い用バケツは媒染液別に用意
<手順>
①二重鍋に染料(濃いときは薄めて)を入れ60℃くらいで炊く。
★POINT 二重鍋を使うのは、加熱中に鍋の壁面に直接布が当たるのを防ぐためです。万一当るとそこだけ色が濃くなったりムラになったりします。二重鍋で染めるとその心配がありません。
②1回目の染め。一旦、火を止めて染める布を入れ菜箸で撹拌する。
③中火で加熱しながら布の動きを止めないように10~15分撹拌し続ける。沸騰したら火を止める。
④さらに10~15分、布を撹拌。合計30分かかります。
★POINT 染液に布を入れたら染めが終了するまで動きを止めず、ずっと撹拌することが大事です。撹拌は、布の間に入っている空気を動かして抜くためです。あまり速くかきまぜず布を団子にせず液の中に広がるように優しく動かします。
⑤よく水洗いして絞り、媒染液に浸けます。
⑥2回目の染め。先ほどの液に染液を継ぎ足して濃くし、1回目と同じ要領で染める。
⑦取り出して水洗いし、脱水して干す。完成
★POINT 2回目の染めが終わったとき、薄いと感じたらもう一度、媒染して水洗いし、新しい染液を継ぎ足して濃くして染め る。それでも薄いときは、また媒染し、染めを繰り返して好みの色に仕上げるといいでしょう。その他、別の染料で染めるなど、いろいろな色の染めが楽しめるのも草木染ならではの醍醐味です。
⑤よく水洗いして絞り、媒染液に浸けます。
⑥2回目の染め。先ほどの液に染液を継ぎ足して濃くし、1回目と同じ要領で染める。
⑦取り出して水洗いし、脱水して干す。完成
★POINT 2回目の染めが終わったとき、薄いと感じたらもう一度、媒染して水洗いし、新しい染液を継ぎ足して濃くして染め る。それでも薄いときは、また媒染し、染めを繰り返して好みの色に仕上げるといいでしょう。その他、別の染料で染めるなど、いろいろな色の染めが楽しめるのも草木染ならではの醍醐味です。
ウールなどの染め方ウールを染めるときは、染液のなかに媒染液を加え50~60℃で20~30分同浴媒染する。また、染液も媒染液も水洗も同じ温度で行うのが基本です。火を止めてそのまま1時間以上浸け置きすると染めがまた違ってきます。