命が溢れる色、屋久杉染
その屋久杉を使って染める屋久杉染めは、家具などを作るときに出る切りくずと屋久杉の葉を用い、何日もかけて独自の技術で煮出した染液を使い屋久杉の奥に眠る色の素を取り出します。そして、一日かかってやっと一枚の布が染め上がります。何しろ屋久杉染めはとても時間がかかります。今まで、ベージュ色の屋久杉染めしか無かったのも頷けます。
染めは、前日に下染めしておいた1m四方の布2枚をよく熱した大量の染液に浸すことから始まります。布は手を休めずに液の中を動かし続けること約4時間、一旦液から取り出してよく水洗いし、ここで色出しと定着のための媒染をしてさらにもう一度、暖めた染液に浸けて約4時間染め、やっと屋久杉染めの色が顔を出してくれます。
一日で染めることができるのは1m四方の布2枚。さらに焦げ茶の屋久杉染めは、泥染めにして色出しをする工程が待っています。
一つ一つ、どんなに手間と時間がかかっても一切手を抜くことなく染める・・・そうすることが、何千年も営々と命を繋いできた屋久杉に対する敬意を払うことだからです。それが夢細工の屋久杉染であり、夢細工だからこそできる伝統の草木染の技術が生み出した力強く美しい貴重な染め色です。
草木で染めた色には、その色だけではなく草木の持つ力が宿っています。屋久杉染めの色に宿る荘厳な命の力強さと深いやさしさ、そして人が仰ぐ尊敬の念・・・・・それらを皆様にも感じていただき、身近において頂ければ幸いです。
世界遺産屋久島
1993年、世界自然遺産に登録された屋久島は、樹齢2000年以上の縄文杉や紀元杉に代表される屋久杉が林立する周囲130kmのほぼ円形の島です。九州最高峰の宮之浦岳をはじめ1000mを越す山が46座もあることから年間を通じて降雨量が多く、一年中霧と雨に覆われています。多くの命を育む豊かな自然は神秘的な景観をつくりだし、その威厳に満ちた光景は訪れた人を感動させています。
一説には樹齢7200年を超えると言われる縄文杉をはじめ、今では数少なくなった1000年以上の樹齢を重ねる屋久杉は、悠久の時を超えて生き変わり、死に変わりしてきた命の営みをその年輪に刻み、新しい命の芽生えとして大地に存在し、私たちに命の尊厳を語りかけます。
今、屋久杉は長寿の象徴として、また「厄過ぎ」にかけて縁起のいい貴重な銘木として、高級家具や置物にも使われています。